アウトドアルームのある家

オフィスと住宅が積層された建物。それぞれが南側の庭を眺められるようにしプライバシーを確保しました。上階の住宅部分には庭と階段で繋がった屋外ではあるが室内のようなアウトドアルームを設置し、屋外と室内を横断した暮らしが楽しめるようにしました。

Data

竣工年
2023
主要用途
住宅
工事種別
新築
構造・規模
混構造(木造+RC)・地上2階 地下1階建て
敷地面積
196.69㎡
建築面積
97.84㎡
延床面積
219.26㎡
UA値
0.5
断熱等級
5(地域区分6)
C値・気密
0.3(中間)/0.8(完了)cm²/m²
担当
鹿内健+渡辺裕貴
構造設計
TTSE株式会社
性能計算+断熱施工
Kizuki 小泉木材
建築コーディネート
OZONE 家design
施工
江中建設株式会社
写真
©Yasu Kojima
動画
atelierAfullo Inc.

南側に庭が連続した住宅地

東京の閑静な住宅街、北側の道路から1m程度上がった南側に長い敷地。敷地の一番奥は両側の家が見事な庭を作られていたので桜や松を見ることができる環境でした。土地は隣接する隣家から購入したと伺っていたので、今回の家を作ることで近隣に支障がでないようにしたいと思いました。そこで南側にしっかりとした庭をつくり、隣家の庭と連続感を維持するように建物を道路側に配置しています。

オフィスと住宅

主用途は施主のご家族が住む住宅ですが、一部にお父様が利用する小さなオフィス空間を求められていました。オフィスは今は大丈夫だが高齢になっても利用しやすいようにバリアフリーでアクセスできること、また将来的にはオフィスでなく単身用の賃貸住宅にもできるように準備して欲しいとリクエストされました。
敷地は道路から1m上がった部分が地面でしたので、鉄筋コンクリートで半地下のオフィスをつくりバリアフリーとしました。また住宅の玄関と収納、オンライン会議用の書斎を半地下にし、それ以外の居住空間をその上に乗せて、どの階からも南側の庭が楽しめるようにしました。

賃貸として貸し出すかもしれない

施主は海外勤務のある企業に勤めていました。海外赴任から戻り賃貸マンションに住んでいましたが、今回新築住宅を作るにあたり「将来的に海外赴任をする可能性はあるので、その際には賃貸住宅として貸し出す可能性もある。海外の人が住みたいと思う家にして欲しい。あと友人達を呼んでソファでくつろいだり、バーベキューができると良い」と話されていました。海外のような大きなスケール感がある部屋、友人たちと過ごすゆったりとした空間を意識しながら設計しました。

アウトドアルーム

半地下の玄関から1層あがった1階に天井高さ5mのLDKと浴室や洗面所などの水廻り空間、その上の2階に寝室を設置しています。東西は隣家が建っていたので窓の設置を最小限に留め、南側に大開口部と北側には通風や隣接する公園を眺める連層窓としました。

日常生活の拠点となる室内空間はUA値0.5W/m²・K(断熱等級5)の高断熱・高気密仕様となっており、環境にも配慮した消費エネルギーの少ない建物となっています。

約32畳(51㎡)のLDKから70cm程度上がった庭側に17畳(27㎡)程度のバルコニー空間を作りました。この部分は両側に壁があり、屋根もある、また増減の家と同じように庭側の欄間部分にはサッシが入っており、奥側でありながら室内のような空間となっています。床も室内と連続したタイルとしているので「より室内感の強い屋外空間」になっておりアウトドアルームと名付けました。

寒さはギフトである

増減の家と同時期に設計をしていたので近しい設計になっていますが、両方の家はこの頃に読んだある本のフレーズに影響を受けています。宿泊したホテルで偶然手にしたものですが、その本には北極圏のイヌイットの生活が紹介されており、そこにはイヌイットのことわざで「寒さはギフトである」という言葉が書かれていました。北極圏の寒さは生物にとって生死を分ける過酷な環境ですが、それは贈り物でもあるというのです。寒さがあるからこそ、生まれる風景や環境もある、また生き物もいる、その食べ物の有難さを感じる、生きている実感も感じるというのが趣旨でした。日本で寒さというとマイナスのイメージばかりですが、それが自然からのギフト(贈り物)であるという考えに心を打たれました。快適な環境さえあればよいという発想に対して、大切なことを問いかけられた気がしたのです。

余白が楽しさをつくる

アウトドアルームでなく室内を広げた方が良いのでは、と言われることがあります。一方で、庭をもっと広くすることもできたのではないか、と言われることもあります。室内空間は施主にとっては十分な広さを確保できていましたし、庭に関しては日常的なメンテナンスも考慮し、人工芝を希望していることからもやみくもに大きくしすぎるのは求めていませんでした。そう考えると余白だったのかもしれません。アウトドアルームは屋根もあり雨風が吹き込みにくいので、賃貸マンションで利用していたダイニングテーブルは室内で利用する予定でしたが、引っ越しの日に急遽アウトドアルームに置くことになりました。当時保育園児だった息子さんは毎朝、朝食をアウトドアルームで食べており、家族は毎週末のバーベキューが楽しみになったと話していました。奥様のお父様もお孫さんに会いにくると毎回アウトドアルームでビールを飲んでいるようです。そのように考えると寒さも暑さもある余白は、このご家族にとってのギフトになったのかもしれません。

Topics_01

スパン6mの無柱空間を木造でつくる

木造住宅は高断熱化との相性が良いです。木材自体がある程度の断熱性を持っており、また熱を伝えにくいのが理由です。また結露の原因となるヒートブリッジ部分も最小限にできることから、断熱と相性が良いと言われています。一方で木造住宅は鉄骨造やコンクリートに比べると無柱空間をつくるには技術が必要となります。今回の住宅は両側には十分な壁がありますが、それと直交する方向には壁が少なく、両側の壁もたわみを考慮するなど構造的には難易度がありました。直交側の壁は斜めの鉄材(ブレース)で、両側のたわみは木材の梁を横倒しに使うことで解決しています。この横倒しをした梁が日本の住宅にあった長押のような雰囲気となり室内、アウトドアルームと連続することで一体感が生まれました。

Topics_02

半地下のオフィス

オフィスはバリアフリーの観点からも道路とフラットアクセスができる半地下空間としました。ただ暗くジメジメした環境にならないように庭がある南側にはドライエリアと呼ばれる広々とした掘り込み空間をつくりました。これにより半地下でありながらも庭との連続性を生み出しています。オフィスも住宅も同じ南側の庭に向かって部屋をつくったのは同じ庭を見ながらも、室内にいるときにはお互いのプライバシーが保てることを狙ったからです。

Topics_03

70cmの段差

LDKとアウトドアルームを同じ高さでフラットにする方が広さ感を感じますが、今回はLDKとアウトドアルームに70cmの段差をつくりました。LDKは天井高さ5mあり広さも32畳とある程度十分な広さを確保できており広さを感じさせる必要は少なかったことも要因ですが、意識したのは南側の庭の反対側にある住宅からのプライバシー確保です。隣家は北側なので多くの窓が設置されていた状態ではなく、施主も気に留めていませんでしたが、何かしら見えづらくする配慮をする必要がありました。そこでアウトドアルームとLDKに段差をつくり、少し奥まった印象としています。段差部分に植えた室内グリーンによっても更に見えにくい印象を生み出しました。