解体せず活かすことを求められた築52年の壁式共同住宅。床を抜いて吹き抜けをつくり耐震性を高めるという逆転の発想で、あえて床を削り付加価値としました。解体のままとどめ、住人がDIYできる「カスタマイズルーム」も設けました。


吹抜耐震補強の集合住宅
Data
- 竣工年
- 2025
- 主要用途
- 賃貸住宅
- 工事種別
- リノベーション(改築+減築)
- 構造・規模
- 壁式鉄筋コンクリート ・5階建て
- 敷地面積
- 392.03㎡
- 建築面積
- 217.08㎡
- 延床面積
- 改修前1085.40㎡/改修後498.39㎡
- 担当
- 鹿内健+鹿内真沙子
- 事業主
- 有限会社イセウ
- 構造設計
- TTSE株式会社
- 施工
- 株式会社小原建設
- 写真
- 鳥村鋼一/鳥村鋼一写真事務所
Award






床を減らして、価値を上げるリノベーション
築52年のRC壁式共同住宅の改修です。各戸が区分所有ではなく、1棟をワンオーナーが所有しており、先代から受け継いだ現オーナーからは、解体して新築するのではなく、地域のために現状を残したまま活かすことを求められました。都心周縁部のターミナル駅から一駅も離れれば、こうしたストックは入居者も多くなく、不動産オーナーの悩みの種となっています。転機となったのは、構造家との協議で出た「壁式構造は、床を抜いて吹き抜けをつくることで耐震性を高められる」という話でした。床面積を減らせば賃料収入は下がる——不動産的には真逆の発想で、あえて床を削って吹き抜けをつくり、付加価値とすることにしたのです。限られた予算のなかで断熱性をある程度確保した居住空間を整え、解体したままの状態でとどめた場所を、入居者が使い方もDIYも自由にできる「カスタマイズルーム」と名付けました。荒々しさが残るためか、内部でありながら自然のなかにいるような不思議な空間で、3層吹き抜けという過剰なまでのスケール感がそう感じさせるのかもしれません。このカスタマイズルームがあることで、居住者の暮らしや楽しみ、そして暮らしのなかでの関わりが広がっていくように感じています。