調材の家

海外暮らしの長い施主のための、自然素材を用いたマンション改修。愛用のデザイナー家具と調和するよう、素材の寸法や見え方、質感まで一つひとつ吟味しました。

Data

竣工年
2025
主要用途
住宅
工事種別
リノベーション
構造・規模
鉄筋コンクリート 地上24階
延床面積
86.44㎡
担当
鹿内健+鹿内真沙子
オーダーキッチン
TIDEA
施工
小川共立建設
写真
©Yasu Kojima
動画
R1996株式会社

3LDK→2LDK

「部屋数は多いが結局納戸になっている」というのが現状でした。家族構成や働き方を考えると寝室は1つ、双方が利用できる書斎をつくり、1部屋をLDKや他の部分へ充当するのが良さそうでした。

以前暮らされていた海外は都会的というよりも牧歌的な風景だったようです。100年以上経過した古い家に住んでいて経年変化の良さを実感していましたが、帰国後に住んだ日本のマンションの新建材にはどうも慣れず、賃貸としてお住まいのマンションを購入してフルリノベーションをすることを決意されたようです。その中で壁の左官材やヘリンボーンは割れも味わいになる素材を選定するなど本物だからこその味わいを楽しみたいと要望されていました。

スケール感

日本の住宅に見られる廊下幅、室内の天井高さなどをマンションの限られた空間の中で、極力確保したいと要望されていました。マンションでは工事のしやすさなどで天井裏の大きな空間が隠れていることも多いので、竣工時の図面などを確認して計画を進めました。また部分的に解体工事し配管経路の調査をしながら設計をしました。

西日が照らす壁

通常タワーマンションは周囲にも同じような高さの建物が林立していますが、今回のお部屋は窓から見渡す限り低層の住宅が広がっていました。リノベーション前から施主が同じ場所にお住まいであり「西日も奥まで差し込むのが良い」と話されていましたのでLDKの南側の壁面は、この室内において重要な壁になると感じていました。

コレクションしている家具・照明との調和

施主は好みの家具や照明器具を時間を掛けて買い集めていました。また今回のリノベーションに合わせてエーロ・サーリネンのテーブルを購入することも決まっていました。リビング・ダイニングにこれら個性豊かな家具が並ぶ中で、キッチンはどのような素材感が良いか、施主と幾度も議論を交わしました。

LDKの延長としての廊下

廊下は内法1m、天井高さ2.67mとゆったりとしたスケール感としました。通常であれば設置されるLDKと廊下の間の扉も無くしてリビングの延長のように扱っています。廊下という場所はどうしても移動という機能的な場所となってしまいますが、くつろぎの場となるLDKの延長であるので照明計画や壁面の素材もLDKと同じとしています。壁を一部曲線としLDKの光が廻り込むアイデアは、施主からの提案でした。また寝室や書斎から出た際に少し壁面に切り取られるように見えるサーリネン・テーブルの先に夕日があたる情景を意識して設計を進めました。

Topics_01

家具のようなキッチン

個性的なデザイン家具と隣接するキッチンは扉材のデザインや素材感、台輪と呼ばれる脚元の支持材の高さを何度もサンプルを作成して検証しました。オーク材を染色した扉材は突板により木目の雰囲気が異なりますので、突板メーカーの工場を訪問して多くのサンプルから選定をしています。また染色や框材の大きさはオーダーキッチンメーカーが40枚以上のサンプルをつくり最終的に決定をしました。

Topics_02

時間を継ぐリメイク

長く経年変化を味わえる素材でリノベーションをし、普遍的な良さを持つデザイン家具や照明器具など、今後長い時間を共にする素材・家具に囲われた室内において、洗面所のカウンターは以前施主が使っていたダイニングテーブルをリメイクして使用しています。オランダで購入した特に有名なメーカーではなかったようですが、端部の曲面加工など手触りを気に入っていたことを踏まえて、家具職人が丁寧に反りを調整しました。また扉材はカウンター材と風合いや色合いが似ているクルミの突板を用いて一体感を作っています。トイレの小さなカウンターも同じリメイク材を用いています。手間や費用がかかりますが、施主がいままで一緒に過ごした時間を、これからの時間にも新たな形で継承したいと考えて提案しました。

Topics_03

暗さを楽しむ

今回のリノベーションでは色合いや素材感を楽しむためにも明るさを求めるのではなく、少し暗いくらいが良いのではないか、という話になりました。そのような理由から天井に設置するダウンライトは必要最小限とし、スタンド照明、ペンダント照明、ブラケット照明による光を主体としています。夕日が室内を染めた後は、少し照度を落とした部屋でゆっくり過ごす日常を送られているようです。